全身麻酔薬による麻酔状態には、中枢神経系におけるGABA反応の促進が関与していると考えられている。我々はGABA受容体の各サブユニットを持つバキュロウイルスをSf9細胞に導入しαβγサブユニットで構成される受容体と、αβサブユニットで構成される受容体を発現させた。GABAおよひ薬物はY-チューブ法によって投与した。 静脈麻酔薬プロポフォルは低濃度でGABA反応を促進し、高濃度ではそれ自体でGABA受容体を活性化した。さらに高濃度になると、GABA受容体チャネルをブロックし、washout直後に経過の長いサージ電流を発生させた。これらの作用は上記の2種の受容体に対して同様であった。増強および活性化の解離定数はαβγサブユニット構成受容体のほうが小さかった。GABAあるいはプロポフォルによる電流は両受容体において、ランタンによって増強された。増強の程度はαβγサブユニット構成受容体のGABA反応を増大し、αβサブユニット構成のGABA反応を抑制した。揮発性痙攣薬(へキサフルオロジエチルエーテル)は両種受容体のGABA反応を抑制した。高濃度(2mM)のイソフルレンはGABA反応の不活性化を速くするように見え、GABAとイソフルレンを同時にwashoutすると大きく長く続くサージ電流を発生した。このことは高濃度の揮発性麻酔薬がGABA受容体チャネルをブロックすることを示唆している。 以上の所見は全身麻酔薬が細胞膜脂質の物理的性質を変えて効果を現わすというユニタリーセオリを否定し、受容体蛋白に作用して全身麻酔を引き起こすという説を支持する。
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