研究概要 |
本研究は、顎変形症患者の顎関節より採取した滑液の生化学的検査、さらには画像診断およびコンピュータによる顎運動解析を行うことで、より総合的に顎変形症患者の顎関節機能を評価することを目的とした。 何ら顎関節症状を認めない顎変形症患者11例(15関節)より採取した顎関節滑液中の一定タンパク濃度(100ug/ml)あたりの平均IL-1β,IL-6濃度はそれぞれ76.7±95.3pg/100ug,385±302pg/100ugであった。またIL-8については、すべての関節において測定限界以下の濃度であった。これらを顎関節内障患者のデータと比較すると滑液中のIL-6,IL-8濃度については有意差はないが低い傾向を示し、IL-1β濃度については有意に低い値であった。顎関節症状を術前認めない顎変形症患者は画像検査で顎関節の骨構成体の変形は見られず、コンピュータを用いた顎運動解析では、術後新たに顎関節雑音など顎関節症状が出現した症例はなかった。 本研究において、咬合異常を呈する顎変形症でも顎関節に何ら異常が認められない関節においては顎関節内障の関節と比較した場合、滑液中の炎症性メディエーターは低いことが認められた。
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