研究概要 |
癌の転移機構の初期では、癌細胞が発現する接着因子と宿主細胞への接着性が重要な鍵となる.この接着性は、癌細胞が発現するFocal adhesion kinase(FAK)のリン酸化をきたし、引き続いて細胞運動が誘発されると考えられる.最近、細胞内セカンドメッセンジャーとして注目されるようになったphosphatidylinositol3-kinase(PI3-Kinase)が、FAKのエフェクターとして機能しうることが報告されたことから、PI3-Kinaseが癌細胞の接着性や運動性を制御しうるか否かを解析した.また,血清シグナル(10%FCS)により癌細胞が発現しているFAKのチロシンリン酸化にPI3-Kinaseが関与することを明らかにした. [方法と結果]ヒト舌原発巣より樹立した扁平上皮癌細胞SASから得られた浸潤性の異なる2つのクローンを用いた.その結果、高浸潤性クローンSAS-H1をWortmannin(WT)処理しPI3-Kinase活性の阻害を行ったところ、1)基底膜成分にたいする接着性の抑制がみられた.2)癌細胞の固有運動能の低下が観察された.3)再構成基底膜通過性の抑制が認められた.4)免疫沈降産物のウェスタンブロット解析によりFAKのチロシンリン酸化が抑制された.阻害を行っていないものでは一過性の上昇を示した.一方、低浸潤性クローンSAS-L1ではWT処理による浸潤抑制は認められなかった. [結論]癌細胞はPI3-Kinaseを介してFAKのチロシンリン酸化に動き細胞運動を誘発することが示唆された.
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