1.口腔外科領域の手術患者の術前、術後の末梢血好中球及び血清中のFas抗原、Fasリガンドの変化について検索した。患者好中球の膜Fasリガンドは手術翌日に有意に増強した。また、これらの発現は手術5日目では、術前値に低下した。一方、血清中のFas抗原量は経過中に変化しなかった。末梢血好清中球数と好中球発現のFas抗原、Fasリガンドは相関した。以上の結果から、Fas-Fasリガンドによるアポトーシスシステムは、術後炎症状態における局所からの末梢血好中球の消去に関与していることが示唆された。 2.好中球のFas誘発アポトーシスに対する走化性因子(FMLP、PAF、LTB4、IL-8)の影響について検討した。いずれの走化性因子も好中球のFas抗原、Fasリガンド発現に影響を与えなかった。しかし、走化性因子は好中球アポトーシスに対して促進あるいは遅延を示した。その結果は、GTP結合タンパクやチロシンキナーゼを介することが示唆された。 3.HL-60白血病細胞の分化誘導(DMSO、ビタミンA、ビタミンD)に伴うFas抗原、Fasリガンド及びBcl-2発現について検討した。HL-60はDMSOあるいはビタミンAによる好中球への分化誘導でFas、Fasリガンドの発現は増加し、Bel-2タンパクは減少した。その結果、分化誘導によってFas依存性アポトーシスの感受性も亢進された。他方、ビタミンDによる単球への分化誘導では好中球への分化誘導と同様な傾向を示したが、その程度は軽度であった。以上の傾向は、mRNAレベルにおいても確認された。 HL-60白血病細胞のFas抗原、Fasリガンド発現に対するIFN-γ、TNF-αの影響について検討した。HL-60はIFN-γ、TNF-αの存在で顕著にFas抗原の発現が誘導され、Fas依存性アポトーシスが亢進した。
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