近年、固形癌の治療成績は飛躍的に向上しつつあるが、浸潤、転移、再発による死亡率は依然として増加傾向にあり、新たな治療法の開発が制癌研究の重要な課題となっている。インターフェロン-γ(IFN-γ)は生体内で多彩な作用を示すサイトカインであるが、特に細胞増殖や分化において重要な役割を果たしていることが明らかとなっている。例えばIFN-γはある種の癌細胞に直接作用してその増殖を抑制する一方、マクロファージを活性化し、その抗腫瘍作用を誘導し、癌細胞に対する生体の防御機構において重要な役割を果たしていると考えられている。 今回我々は、IFN-γを用いた口腔癌の治療法を開発するための基礎的研究として、IFN-γレセプター遺伝子欠失マウス(IFN-γR^<0/0>マウス)に、同系腫瘍であり高転移能を有するB16メラノーマ細胞を側尾静脈より移植し、3週間後にマウスを屠殺し肝臓、肺、脾臓を摘出し、組織学的および分子生物学的に転移状態を分析し、癌細胞の転移におよぼすIFN-γの作用を検討した。 その結果、IFN-γR^<0/0>マウスの各臓器に比較して、野性型マウスより摘出した臓器に、より多数の転移巣を認めた。野性型、IFN-γR^<0/0>マウス間で血中IL-1α、IL-6、TNF-α、IL-18レベルに大きな差は認められなかった。また、マクロファージの抗腫瘍活性の作用物質とされる一酸化窒素の血中レベルも両マウス間で変化を認めなかった。しかし、RT-PCR法により各臓器のIL-12mRNAレベルを解析したところ、IFN-γR^<0/0>マウスのIL-12mRNAレベルは野性型のそれよりも有意に上昇していることが明らかとされた。 以上より、IFN-γが作用しない条件下では、IL-12が生体の抗腫瘍免疫能を誘導している可能性が示唆された。
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