研究概要 |
〈目的〉同種血輸血は免疫機能を低下させるという報告が見られる。また、自己血輸血は免疫機能を賦活するといわれている。免疫機能などの指標ともされるサイトカインを測定することで、自己血輸血が有用な方法であるかを検討した。 〈対象・方法〉採血に同意を得た、定時手術を受ける患者で、輸血不要の小手術症例8例、下顎枝矢状分割術症例8例、悪性腫瘍切除例8例の計24例について、術前、術後1病日、7病日、10病日に、ACTH,IL-1β,IL-6を測定し、3群間で比較検討した。また下顎枝矢状分割術では自己血輸血を希釈式と貯血式に各4例ずつ比較し、悪性腫瘍症例では自己血輸血のみで対処した4例と同種血輸血併用症例4例とに分け、それぞれについても比較検討した。 〈結果・考察〉ACTH,IL-1βは3群間に有意差は見られなかった.IL-6は悪性腫瘍で最大値を示した。自己血輸血は希釈式で、貯血式よりも上昇が見られた。また、同種血輸血併用では自己血輸血単独よりも上昇した。IL-6の上昇は手術侵襲の大きさにより違いがみられた。 これらの結果から、同種血輸血よりは自己血輸血の使用が、また希釈式よりも貯血式のほうが生体にたいする侵襲が少ない可能性が示唆された。今後も症例数を増やして検討していく予定である。
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