二次口蓋発生における口蓋突起癒合面の上皮細胞の消失はapoptosis説、eplthellal-mesenchymal transformation説、migration説が唱えられており論議の焦点となっているようである。我々はプログラム細胞死の起こる時期にapoptosis発現を抑制することで口蓋裂が発生するといった仮定の下、TONEらによる5-bromodeoxyurldine(BrdU)を用いた口蓋裂マウスモデルを作成、通常のマウス口蓋発生と比較して細胞消失がapoptosisに由来するものか否かを検索した。Nile blue生体染色における実体顕微鏡下の観察では、正常群は二次口蓋癒合相当部に死細胞の貪食によるマクロファージの集積を示すNile blue陽性細胞の集積を認めたのに対しBrdU投与群では口蓋裂が観察され、さらに本来癒合すべき口蓋突起先端の内側縁にNile blue陽性細胞の集積は認められなかった。また癒合直後ではH-E染色において正常群で癒合した口蓋内部の間葉組織中に一部上皮細胞の残遺を認め、同時期のBrdU投与群では口蓋突起は離開しその先端部上皮は鼻腔側、口腔側の上皮と比較して1〜2層の菲薄な扁平上皮を認めた。さらにin situにおけるDNA fragmentationの観察のためTdT-mediated dUTP-biotinnick end labelling法(TUNEL法)を用いてavldin-FITCを標識とした蛍光顕微鏡的観察とSAB(streptavidin-blotin)法による観察を行った。正常群ではavidin-FITC標識、peroxidase標識DAB発色標本において口蓋突起癒合部の鼻腔側、口腔側にDNA fragmentationを示すTUNEL陽性細胞を認めたが、BrdU投与群では口蓋突起先端の上皮細胞は両者ともにTUNEL陽性細胞を認めなかった。現在、さらに免疫組織化学的手法によりapoptosisのシグナルを細胞に伝える細胞表面タンパク質であるFas抗原の発現について実験中である。
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