研究概要 |
本研究は口腔癌の臨床腫瘍材料を対象として,組織培養法を用いた抗癌剤感受性試験Histoculture Drug Response Assay(HDRA)を施行し,その臨床的有用性を検討した. 対象症例は口腔外科に受診した進行口腔扁平上皮癌患者19例23検体である.薬剤はCisplatin(CDDP),Carboplatin(CBDCA),Adriamycin(ADM)を用いた.研究方法は原発巣より可及的に無菌的に採取した生検組織,または手術時に採取した癌組織をコラーゲンゲル上で7日間薬剤接触させ培養した.培養終了時にMTTアッセイによる判定を行い,対照群に比して50%以上の抑制率が認められた場合をin vitro感受性ありとし,有効とした。 薬剤cut off濃度について実験的に検討した結果,CDDP20μg/ml,CBDCA25μg/ml,ADM15μg/mlとした。HDRAは細胞間接触を保持したまま長期培養が可能であった。また,口腔扁平上皮癌ではMTTアッセイの結果として判定可能率は91.3%であった.腫瘍発育阻止率(I.I)による検討では,原発巣と転移リンパ節および原発部位別による比較ではI.Iに差は認められなかった。判定可能症例中10例にCDDPあるいはCBDCAを中心とした化学療法を行い,化学療法群と無化学療法群の生存率に有意差は認められなかったものの,抗癌剤選択の一つの視標になり得た。口腔癌症例に対して組織培養法HDRAによる抗癌剤感受性試験を行い,その基礎データを得るとともに,本法は臨床応用に有用な試験法であることが示唆された。今後も症例を追加して検討していく。
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