研究概要 |
脳誘発反応波のうち,導出が比較的容易で,再現性に富む後耳介筋反射(PAMR)の変化,特に振幅変化と臨床的至適鎮静度との関連性に着目し,客観的鎮静度モニターとしての有用性を検討した.方法は,ミダゾラム初回量1〜2mg投与,以下3〜5分間隔で1mgを投与し,臨床的バイタルサインによる至適鎮静度が得られるまで追加投与,ジアゼパム投与群では,初回量を2〜3mgとし,以下3〜5分間隔で至適鎮静が得られるまで追加投与した.薬剤の各投与3分後に,シグナルプロセッサ7S12(日本電気三栄)を用いて,イア-ピ-スにて音圧100dBのクリック音5回/秒を呈示し,加算回数60〜100回の条件下で,左右乳様突起上の後耳介筋起始部よりPAMR波を誘出した.安静時薬剤投与前のPAMR波形を対照値とした.PAMRの振幅はP波とN波の絶対値の和とし,振幅の変化は対照値と100とした百分率で表し,臨床的至適鎮静度との関連を検討して次の結果を得た. 1)ミダゾラム血中(血漿)濃度とPAMR振幅は逆相関を呈し,臨床的至適鎮静時 ミダゾラム193.0【.+-。】11.0ng/ml(n=20)にはPAMRは19.7【.+-。】6.9%に低下した.同様にジアゼパムでは至適鎮静時血中濃度678【.+-。】32.5ng/mlにPAMRは18.9【.+-。】4.5%に低下した. 2)N波およびP波の潜時は薬剤の血中濃度に応じて有意に延長した.N波では,対照値12.46【.+-。】0.89msec(n=20)に対し,至適鎮静では16.39【.+-。】3.39msecに延長した.同様にP波は対照値17.05【.+-。】1.66msec(n=20)に対し19.82【.+-。】2.53msecに延長した. 3)睡眠に陥る深度鎮静ではPAMRは消失した. 4)GSR波は環境因子(室温,湿度,通気など)の影響を強く受け,一定の傾向を得ることは困難であった. 以上の結果は,PAMR波形変化は客観的モニターとして有用であることを示唆している.
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