研究概要 |
軽度塩酸ケタミン(1〜3mg/kg)投与下の雑種成犬でシグナルプロセッサ7S12(日本電気三栄)を用いて,イア-ピ-スにて音圧100dBのクリック音5回/秒を呈示し,加算回数60回〜100回の条件下で,左右乳様突起上の後耳介筋起始初部より針電極にてPAMR波を誘出した.ミダゾラム投与前のPRMR波形を対象値とした.PAMRの振幅はP波とN波の絶対値の和とし,振幅の変化は対照値を100とした百倍率を計測して血中ミダゾラム濃度との関連を検討して次の結果を得た. 1)ミダゾラム血中(血漿)濃度とPAMR振幅は逆相関を呈した.ミダゾラム250.0±45.8ng/ml(n=5)にはPAMRは12.3±4.5%に低下した.ミダゾラム血中濃度3000ng/ml以上では,PAMR波形は消失した. 2)N波およびP波の潜時は薬剤の血中濃度に応じて有意に延長した.N波では,対照値10.36±4.83msec(n=5)に対し,ミダゾラム濃度250.0±45.8ng/ml時では14.38±5.62msecに延長した. 3)PAMR波の消失時点で,フルマゼニル0.2〜0.4mg/kgの投与を行った.PAMR振幅はフルマゼニル投与量依存性に増大する傾向がみられた.経時的には0.4mg/kg投与後6分で最大振幅を示し,ほぼ対照値に復した. 疼痛刺激(ピンチ刺激)によるPAMRへの影響は,振幅増大として現れた.以上の結果は,PAMR波形の変化は鎮静レベルに正確には反映しないことなどの注意点はあるが,臨床的客観的モニターとして有用であることを示唆している.
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