生後1週のマウス頭蓋冠を切り出し、両側の頭頂骨頂にピン穴をあけ滅菌クリップを挿入し、両外側方向に7gの持続的牽引力がかかるようにして、2週間培養した。この操作により、正中縫合は、開大伸展して線維化が進み、約1週間で石灰化を認めた。負荷開始時より石灰化に至る早期反応時期における骨基質タンパク産生の経時的変化をRT-PCR法にて検索した。Osteopontin(OPN)は、2、3日で急速に発現をみたが1週近くで検出されなくなった。Osteonectin(ON)は、負荷以前より発現をみたが、経時的に増加の傾向を示した。Osteocalcin(OC)は、ON同様に負荷以前より発現をみたが、経時的に発現されなくなった。Bone Morphogenetic Protein4(BMP4)は負荷直後と石灰化開始期に信号を認めた。これらの情報を基に、組織化学法とin situ hybridization法(ISH)による組織学的検索を行った。無負荷状態では、骨基質表面に接する骨芽細胞にOC・ON、また縫合部に向かう数層の前骨芽細胞様細胞においてONの信号が検出されたが、縫合部中央の細胞にはいずれの信号も検出されなかった。また、OC・ONの信号を認めた細胞はAlkaline phosphatase陽性であった。負荷により、縫合が伸展され細胞は扁平化を認め、外力に並行に密接に配列し、その後、分裂、増殖を繰り返して縫合部の開大に寄与しているが、この石灰化の最前線において、OPNは前骨芽細胞から分化した幼弱な骨芽細胞において発現が観察される。これらの骨芽細胞は、さらにType I Collagenをも産生して、細胞外基質を蓄積させているが、石灰化の進行に合わせてOPNは減少し、代わってOCの発現が認められるようになった。 BMP4は、現時点でISHでは検出出来ず、手技の改良を検索中である。
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