研究概要 |
Saleらの言う、同種骨髄移植後の慢性GVHDの早期診断における口唇生検の有用性を検討するための基礎として以下のことを行った。 【目的】口腔と共にGVHD早期に症状が出現しやすいとされる眼、皮膚と比較し、口唇生検の妥当性を検討する。 【対象】当院第3内科において同種骨髄移植後100日目頃に口腔症状を呈し、Seatle groupの基準により慢性GVHDと臨床診断された例で、局所麻酔下で口唇生検を行った例。対照は、粘液嚢胞摘出時の近傍の口唇粘膜、骨髄移植後8年間GVHD症状を示さず予後良好な例および化学療法終了後で骨髄移植直前の患者の口唇粘膜、および 口腔偏平苔癬とした。 【方法】口腔、眼、皮膚の肉眼的所見を観察し、かつ口唇粘膜と同時期に眼科において眼瞼結膜生検、皮膚科において皮膚生検が行われた例を、H-E染色、DAKOのLSABキットによる免疫組織化学的染色で比較した。 【結果】口腔は肝障害、肺病変などに先行して眼病変と共に比較的早期に肉眼的に識別できる病変が出現する。皮膚は急性GVHDほど肉眼的病変が顕著ではない。皮膚、粘膜上皮および粘膜下組織は、同様にICAM-1,HLA-DR陽性となるが、小唾液腺の方が鋭敏であった。眼病変は口腔病変よりも出現率が低くまた眼瞼結膜生検は患者の苦痛も大きく染色性も劣るので、検査としては適さないと考えられた。対照群は、偏平苔癬以外では免疫組織化学的染色陰性であった。偏平苔癬の粘膜上皮、粘膜下組織では、慢性GVHDの染色結果に類似していた。
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