同種骨髄移植後の急性および慢性GVHDの早期診断における口唇生検の有用性を検討するために以下のことを行った。 【目的】同種骨髄移植後に急性および慢性GVHDと思われる口腔症状を呈した症例の口唇生検を行い、組織学的所見を検討して肉眼的口腔臨床所見との比較を行う。 【対象】白血病、骨髄異型性症候群、重症再生不良性貧血などのため、同胞または骨髄バンクから同種骨髄移植を受けた後、口腔症状を呈した例。 【方法】口腔の肉眼的所見とその後の臨床経過、および口唇生検材料のH-E染色と免疫組織化学的染色による検討を行った。 【結果】慢性GVHDの比較的早期に、口腔には口腔乾燥症と共にいわゆる口腔扁平苔癬とは肉眼的にも識別できる病変が出現した。口唇生検材料の組織所見では上皮下、小唾液腺へのCD4、CD8細胞浸潤、上皮および上皮下のHLA-DR、ICAM-1陽性所見、上皮基底細胞および唾液腺細胞の破壊が見られた。臓器別に慢性GVHD症状の発現する頻度を検討した結果、皮膚・眼・肝臓よりも口腔が発現頻度が高く早期に症状が出現し、他臓器を観察するよりも口腔を観察する方が有利であると考えられた。例数を重ねると、口唇生検の組織所見に対応する口腔の肉眼的所見が推測できるようになり、口腔の肉眼的所見から診断ができる例もあることがわかり、これを「慢性GVHD口内炎」と呼んで6つの型別((1)白色化・粘膜粗造化、(2)扁平苔癬様糜爛、(3)血管拡張様糜爛、(4)潰瘍形成・粘膜壊死、(5)粘膜壊死・瘢痕化、(5)粘膜萎縮)に分類し肉眼的識別の判断基準を作ろうと試みた。急性GVHDでは、口腔症状は肉眼的所見のみでは識別しにくかったが、組織学的には慢性と同様の所見が認められた。急性GVHDの早期診断には皮膚の方が口腔よりも有利であり、逆に慢性GVHDの早期診断には口腔の方がより有意義であると考えられた。
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