研究概要 |
本研究の目的は、食塊の破壊粉砕の動力学的最適性を評価尺度として、個体別の所与の咬合状態、さらにその排列目標とすべき咬合状態を検討することにある。 この課題を遂行するにあたり、まず、1.咬合面形状ならびにその対向関係について、2.歯周組織に対する咬合力の伝播吸収について、それぞれの影響を検討する必要がある。1.に関しては、既に、本講座において数々の検討が進められてきている。本研究代表者らは、特に2.に関して検討を行うこととし、本年度は成果を上げることができた。 まず、有限要素法非線形動解析により歯根膜の動力学的シミュレーションを行い、衝撃力である咬合力と静荷重である矯正力との力学的な差異を明らかにした。これは、咬合の安定と歯の移動という相反する生体現象の機序解明への糸口となるものと考えられた(第55回日本橋正歯科学会大会、顎顔面バイオメカニクス学会誌発表)。さらに、咬合状態、特に前歯部被蓋状態に着目し、同様の動力学的シミュレーションにより、咬合力の歯周組織に与える影響を検討した。その結果、逆被蓋である咬合状態の歯周組織における為害性を力学的観点から示唆することができた(顎顔面バイオメカニクス学会誌掲載予定)。 これらにより、種々の咬合状態に対し動力学的最適性を評価尺度として検討してゆくことが有効であることが確認された。なお、上記の成果は、学会(The 3rd Symposium on Computer Method in Biomechanics and Biomedical Engineering,Barcelona,May,1997)発表予定である。
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