研究概要 |
歯周疾患の多くは,学童期に歯肉炎という形で発症する。またその多くはプラークの付着状態に起因する不潔性歯肉炎である。 前年度は,カリオスタットの24時間判定結果が歯垢の付着量と関係するという,これまでの臨床的経験から,その関係について検討を加えたところ,カリオスタットの24時間判定結果と歯肉炎は深い関係があることがわかった。本年は,昨年より追跡可能であった中学生393名を対象とた。昨年度口腔衛生指導を行った者を対象として,歯肉炎の診査を行い,歯肉炎改善群と非改善群の要因について分析を行った。歯肉炎の非改善群について,検討を加えたところ叢生などの不正咬合を有する者・矯正中の者・口呼吸を持つの者が多く見られた。 そこで今回は,この点に着目し,不正咬合の状態と歯肉炎との関係について,検討を加えた。また同時にプラークの付着状態についても診査し,それぞれの関係について検討を加えた。なお不正咬合・歯肉炎・プラーク付着状態は,上下顎前歯部について診査した。 前歯部の不正咬合(叢生)を正常群・軽度群・中等度以上群に分類した。67%が正常咬合,25%が軽度不正咬合群,中等度以上の不正咬合は8.3%見られた。一方歯肉炎は,(-)群が12.7%,(±)群は46.1%,(+,++)群は,41.2%であった。歯垢の付着状態は,(-)が14.5%,(±)は,60.3%,(+,++)は,25.2%であった。 これら前歯部不正咬合・歯肉炎・歯垢の相互について検討を加えたところ危険率p<0.001で各群間の間には,高度の相関性が認められた。このことより歯肉炎を発症させる要因の一つとして不正咬合(叢生)があげられることがわかった。また不正咬合がある場合は,歯垢が付着しやすいことが想定されるので,より重点的に口腔衛生指導を行う必要があると推察された。
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