被験者として、顎口腔機能および上下顎の前後的関係に異常を認めず、著しい歯の位置異常を伴わない成人30名、小児30名の咀嚼筋活動を記録した結果、以下の所見が明らかとなった。 1.3筋の筋活動については、男女間に有意差を認めなかった。 2.安静時筋活動では、3筋とも筋放電位の低いバーストが多く、最大筋放電位25%以下のものが、8割近くを占めた。 3.小児では3筋のうち側頭筋の、成人では顎二腹筋のバースト持続時間ならびに出現回数が他筋と比べて有意に大きな値を示し、咬筋はいずれにおいても最も小さい値を示した。 4.小児と成人間の比較では、側頭筋活動の持続時間、出現回数が、小児において有意に大きな値を示し、咬筋では成人の方が多い傾向を示した。 5.咬筋、顎二腹筋では、小児、成人ともに、筋放電位の低いバーストの持続時間および出現回数が、下顎下縁平面角の大きいhigh angle群より、角度の小さいlow angle群において有意に多かった。また成人では、最大筋放電位の半分以上に相当する筋放電位の高いバーストもlow angle群において有意に多かった。一方、側頭筋の活動については、3群間で全く有意差を認めなかった。 6.小児、成人ともに、咬筋および顎二腹筋の筋放電位の低いバーストと顎顔面骨格の垂直的形態の間に有意な負の相関を、側頭筋では正の相関が認められた。 以上のことから、平常時における咀嚼筋活動は主として持続的な弱い筋活動から成り、顎顔面骨格の垂直的形態との密接な関連があることが明らかとなった。
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