研究概要 |
本年度は、歯周病関連細菌より抽出精製した熱ショック蛋白質(HSP)を利用してそのN端末アミノ酸配列を分析した。P.gingivalis及びB.forsythusにDnaK様蛋白質は、両者ともE.coliのDnaKと高いホモロジーを示した。GroEL様蛋白質についてはP.g.,A.actinomycetemcomitans,B.f.及びE.c.ともN末端アミノ酸配列の高いホモロジーが認められた。 更に、精製HSPを抗原として利用してウサギを用いたポリクローナル抗体の作成を試み、高い抗体価を有する特異抗体を得ることに成功した。これを用いて下記の2つの実験を行った。(1)P.g.HSPの局在性の検索。P.g.HSP特異抗体を用いたウエスタンイムノブロッティングにより GroEL 様蛋白質は細胞質に、DnaK様蛋白質は細胞質及びペリプラズムに存在していることが明らかとなった。(2)各精製HSPとの交差反応。P.g.及びb.f.のDnaK様蛋白質と抗E.c.抗体との交差反応は非常に弱いものであった。GroEL様蛋白質についてはP.g.,A.a.,B.f.及びE.c.とも個々の特異抗体と強い交差反応を認めた。また特異抗体はリコンビナント・ヒトHSP60と弱い交差反応を示した。 以上の結果から、歯周病関連細菌由来のGroEL様、DnaK様蛋白質の構造はよく保存されていることが明らかとなった。とくにGroEL様蛋白質は互いに非常に類似した構造を有していた。歯周局所での免疫応答に分子相同性の非常に高い HSP が直接的に関連しているか否かを明らかにしていくことが今後の検討課題である。
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