研究概要 |
近年、炎症や自己免疫疾患に関連して熱ショック蛋白質(HSP)の役割が注目されている。本研究では歯周病感関連細菌よりHSPを抽出する方法を確立し、これを利用してその免疫学的性状を調べる事により、その歯周病に対する役割を検索した。歯周病関連細菌のうち、P.gingivalis,A.actinomycetemcomitans,B.forsythusの全菌体破砕抽出液よりATP-agaroseを用いたアフィニティークロマトグラフィー及び分取電気泳動法によりGroEL様、DnaK様蛋白質を各菌より分離・精製した。またこれらの精製HSPを利用してポリクローナル抗体を作成した。P.g.のHSPについてそれらの局在性を特異抗体を用いたウエスタンイムノブロッティングにより検索したところ、GroEL様蛋白質は細胞質に、DnaK様蛋白質は細胞質及びペリプラズムに存在していることが明らかとなった。P.g.及びB.f.のDnaK様蛋白質についてそのN末端アミノ酸配列を分析した結果、E.coliのDnaKと両者とも高いホモロジーを示したものの、抗E.c.抗体との交差反応は非常に弱いものであった。GroEL様蛋白質についてはP.g.,A.a.,B.f.及びE.c.ともN末端アミノ酸配列の高いホモロジーを示し、個々の特異抗体とも強い交差反応を認めた。また特異抗体はリコンビナント・ヒトHSP60と弱い交差反応を示した。 以上の結果から、歯周病関連細菌由来のGroEL様、DnaK様蛋白質の構造はよく保存されており、とくにGroEL様蛋白質は互いに類似した構造を有することが明らかとなった。これらの結果は細菌由来のHSPが免疫反応のターゲットとして重要であるが、逆にこの感染防御反応がその分子相同性から病原性の惹起へ移行する可能性を示唆するものである。
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