研究概要 |
1.ヒト乳歯歯髄細胞の分離および癌化遺伝子導入 ヒト乳歯歯髄を無菌的に取り出し,歯髄細胞を分離した。explant-out growth法によって細胞を採取する予定であったが,増殖が遅く,遺伝子導入に必要な細胞数を得るのに時間がかかりすぎた。そこで歯髄細胞をcollagenase処理し,細胞を分散する事によって多数の歯髄細胞を分離することが可能になった。 サルの癌化ウイルスであるsimian virus 40の感染によって,ヒト乳歯歯髄細胞にlarge T antigenの導入を試みたが,ヒト細胞は当virusの半許容細胞で,virusの増殖が進み,apoptosisによる細胞死が誘導されてしまった。そこでlarge T antigen cDNAを入手し,そのcDNAを真核細胞発現ベクターに組み込み,遺伝子導入を行った。導入の確認はlarge T antigenに対する蛍光抗体を使用し,免疫染色によって蛋白質の発現が誘導されていることを確認した。 発現ベクターはneomycin耐性遺伝子も有しているので,免疫染色とともにneomycinによって遺伝子導入細胞のselectionを行い,stableな遺伝子導入細胞の調製を行うとともにヒト乳歯歯髄細胞株の樹立を行う予定である(長谷川)。 2.ヒト象牙質特異的蛋白質フォスフォフォリンに対する抗体の調製 ヒト象牙質より蛋白質を抽出・精製したフォスフォフォリンを使用して,ポリクローナル抗体を調製した。この抗体の使用によって,免疫沈降法によるフォスフォフォリンの定量分析・免疫染色,FACSが可能になった。 今後この抗体を使用して,遺伝子導入細胞株の中から象牙芽細胞の選択を行う予定である(渡邊)。
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