研究概要 |
骨芽細胞の密度が細胞の造骨活性に及ぼす影響を検討するため,溝のない平滑な試料(溝なし試料)と表面に幅60μmの溝を付けた試料(溝付き試料)の上で骨芽細胞を最長3週間培養し,細胞密度の違いによるアルカリフォスファターゼ(Alp)活性,石灰化物の重量,DNA量とコラーゲンの分布の差を調べた. 1.細胞密度 細胞密度は溝なし試料では8±2個/60μm,溝付き試料では17±3個/60μmで,溝付き試料で有意に大きかった. 2.造骨活性 1)Alp活性 Alp活性は,両試料とも培養7日目まで急増し,それ以降増加率が減少した.培養2日目,7日目,14日目には両試料で差がなかったが,21日目には溝付き試料で85.7±8.6μmol/mg protein/20minで,溝なし試料の71.8±4.3μmol/mg protein/20minより有意に高かった. 2)石灰化物の重量 21日目の石灰化物重量は,溝付き試料では10.2±2.3mgで,溝なし試料の4.4±1.1mgより1%未満の危険率で有意に大きかった. 3)DNA量 DNA量は両試料とも経時的に増加し,培養2日目,7日目には差がなかったが,14日目には溝付き試料で1.39±0.09μgで溝なし試料の1.20±0.09μgより有意に多かった.14日目以降は増加率が減少し,21日目には両試料で差がなかった. コラーゲンの分布 コラーゲン線維は,培養2日目には観察されなかった.培養14日目以降には,コラーゲン線維は溝付き試料では溝に沿って配列して方向性が見られたが,溝なし試料では不規則に配列していた. 3.まとめ 骨芽細胞の密度が大きいと,細胞の増殖は早まり,コラーゲン線維は方向性をもつようになり,細胞のAlp活性が高まって石灰化物形成が促進されると考えられた.
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