研究概要 |
骨芽細胞の密度が細胞の造骨活性に及ぼす影響を検討するため,溝のない平滑な試料(溝なし試料)と表面に幅60μmの溝を付けた試料(溝付き試料)の上で骨芽細胞を最長21日間培養し,細胞密度の違いによるDNA量,アルカリフォスファターゼ(Alp)活性,コラーゲンの走向と石灰化物の重量を調べた. 1. 細胞密度 溝付き試料の細胞密度は17±3個/60μmで,溝なし試料の8±2個/60μmより有意に大きかった. 2. 造骨活性 1) DNA量 DNA量は経時的に増加し.培養2日目,7日目には両試料で差がなかった.しかし14日目には,溝付き試料で1.39±0.09μgで,溝なし試料の1.20±0.09μgより有意に多かった.14日目以降は増加率が減少し,21日目には両試料で差がなかった. 2) Alp活性 AIp活性は,両試料とも培養7日目まで急増し,それ以降増加率が減少した.培養2日目,7日目,14日目には両試料で差がなかった.しかし21日目には,溝付き試料で85.7±8.6μmol/mg protein/20minで,溝なし試料の71.8±4.3μmol/mg protein/20minより有意に高かった. 3) コラーゲンの走向 コラーゲン線維は,培養7日目以降に観察された.培養14日目以降には.コラーゲン線維は溝付き試料では溝に沿って配列して方向性が見られたが,溝なし試料では不規則に配列していた. 4) 石灰化物の重量 21日目の石灰化物重量は,溝付き試料では10.2±2.3mgで.溝なし試料の4.4±1.1mgより有意に大きかった. 3. まとめ 輻60μmの溝を付けた試料表面では骨芽細胞の密度が大きく,これが細胞の増殖を早め,細胞のAlp活性が高まって石灰化物形成が促進されると考えられた.また,石灰化物形成の促進にはコラーゲン線維の方向性も関与していることが示唆された.
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