研究概要 |
当初の本年度の研究目的は精製したカルシウム依存性抗原物質の性状分析の継続であったが,その後の結果により,これが関与すると考えられるヒト唾液凝集反応をより詳細に分析する必要に迫られ、こちらを優先した。 1。本研究で使用してきたS.intermedius1208-1株はヒト唾液で凝集するものの、その反応は高分子量のムチン様物質の粘性により阻害される。 2。1μm濾過唾液を使用した凝集反応では唾液量と細胞数に最適バランスがあること、カルシウム依存性だが、カルシウム濃度にも最適バランスがあること、pHは5.5以上で反応することが分かった。 3。凝集反応を指標として1μm濾過唾液をゲル濾過にて精製したところ、還元状態でのみ分子量10万を越える2種類のタンパク分子が得られた。そこで通常はより大きな複合体を形成しているものと思われる。 4。一方、唾液を他の菌で吸収して凝集能を調べたところ、S.intermedius K1K,S.mutansMT8148では本凝集因子を共有しているものの、S.intermedius K16-1Kはさらに別の機序が関与していた。 5。アパタイトビーズ、プラスチック上、固定化したactinomyces菌上を精製凝集因子で表面処理すると、いずれでも連鎖球菌の付着に関与していた。また全唾液で表面処理した各付着対象物への阻害能はアパタイトビーズに対するもののみ有効に阻害した。 6。男女各5人、計10人の唾液の凝集能は個人差が著しく、凝集能を欠いた人は凝集因子を欠いていた。アパタイトビーズ、actinomyces菌体を全唾液で処理すると、凝集能と無関係に連鎖球菌の付着能を示した。 今後は本来のカルシウム依存性抗原物質と本凝集因子との関連を調べて行きたい。
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