研究概要 |
歯エナメル質のフルオロ化を促進する目的で,エナメル質へのF-作用時に紫外域レーザー光照射を同時に行って,光化学反応によるF-の取り込み促進を検討している。エキシマレーザー(KrF,248nm)を用い,その照射エネルギーは70mJ/cm^2とし,フッ化物の種々作用濃度からエナメル質のF-取り込み効果を解析した。 抜去大臼歯面表層の200μmを研磨除去したエナメル質片を1歯から4片作製し,それぞれF-とレーザー光照射(同時作用群),F-作用(塗布群),レーザー光射群(照射群)および対照群の4群とした。KrF(248nm)レーザー光の照射条件は,70mJ/cm^2で500〜5000shots,フッ化物溶液(NaF)のF-濃度は0.1,0.22,0.5,1.0,2.0,3.0および4.0%とした。実験エナメル質片は1M-KOHで24時間の洗浄を行ってから,SEM像およびXPSによる表層形態の観察と乳酸緩衝液による耐酸性試験に供試した。耐酸性は実験エナメル質片に0.1M-乳酸緩衝液(pH4.0,2μl)を含ませたセルロース・アセテート膜を1分間貼り付け,溶出するCa量をICPで分析して行った。レーザー光照射による光化学反応の誘起が,エナメル質表層のSEM像およびXPSの解析から示唆された。4群間の耐酸性に有意差(p<0.05,one-way ANOVA)が認められ,なかでも同時作用群の耐酸性が各F-作用濃度で最大を示した。各F-作用濃度での耐酸性(Ca溶出抑制率)は,対照群に比較して0.1%F-作用で同時作用群が47%の抑制(塗布群が3%抑制),以下0.22F-で51%(20%),0.5%F-で43%(21%),1.0%F-51%(16%),2.0%F-で46%(22%),3.0%F-で42%(24%),4.0%F-で36%(7%)を示した。また,1.0%F-作用濃度でレーザー光照射を500〜5000shotsで比較した場合,その耐酸効果は3000shotsで最大を示した。
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