研究概要 |
1.食魂嚥下後口腔内に食渣の量について検討した。各食物一口量を決め一定時間咀嚼させた後嚥下させ、嚥下直後、10秒後、1分後、3分後に20mlの蒸留水で洗口させ、回収したものを凍結乾燥し重量を測定した。一口量の乾燥重量と比較し、どの程度の食渣が口腔に残留するかについて調べた結果、クラッカー15.2%,ふ菓子8.1%,カステラ4.2%,白米2.9%,魚肉ソ-セージ1.8%であった。食物嚥下時の歯面付着性の違いが影響しているものと思われた。 2.唾液クリアランスと口腔内各部位の環境の関連性を調べるため。乳酸飲料摂取後の歯牙表面のpHの変化を部位別にモニターした。上顎前歯唇面、上顎臼歯頬面、下顎前歯舌面にイオン感応型電解効果トランジスター電極を固定装置を介して装着した。pHが安定してから、乳酸飲料水20mlを摂取し、pHの変化をモニターした。その結果pHが最低を示してから、もとのpHに回復するまでに要する時間は下顎前歯舌面が最も速く、次いで上顎臼歯頬面、上顎前歯唇面の順であった。このことは唾液クリアランスの部位特異性が口腔内各部位の環境維持に大きく関わっている事を示唆するものと考えられた。 3.臼歯部頬側面の唾液クリアランスについて検討を行った。1mol/LのKClを含む寒天をプラスチックホルダーの3個の円柱型の凹みに固まらせ、そのホルダーを中央の凹みが上顎第1大臼歯頬側面にくるようにレジンプレートで口腔内に固定した。一定時間後ホルダーから3個の寒天を取り出し、300ml,100ppmのNaCl溶液内にそれぞれ入れてKClを全て溶出させた。その溶液中のKClの濃度から、その部位の唾液クリアランス率を推定した。その結果、耳下腺唾液は安静時においては第1大臼歯の遠心方向より近心方向に流れる量が多いことが明らかとなった。
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