乳歯の感染根管治療は、乳歯の歯根の形態学特徴から難しい。また、エックス線被爆の問題や低年齢児では、エックス線撮影が困難な場合もあり、撮影できないこともある。最近様々な分野で用いられてきている超音波診断法は、放射線被爆を伴わずに診断可能であるが、乳歯の歯内療法の分野ではまだ用いられていない。特に、永久歯と違い乳歯では慢性根尖性歯周炎から根分岐部病変を併発し、歯肉膿瘍を形成することが多い。 今回、昭和大学歯科病院小児歯科外来患者のうち、乳前歯、乳臼歯部に慢性根尖性歯周炎から歯肉膿瘍を有するもの15部位、その反対同名歯の分岐部を保護者の同意を得て、エックス線写真、および眼科用に開発されたNIDEK CO.L.T.D.10MHZ OPHTHLMIC BIOMETORY Probeにて超音波検査法を用いて診断を行った。 結果:歯肉膿瘍の形成した部位の大きさは、3〜15mmで、超音波検査による深度は、8〜14.9mmであった。歯肉膿瘍直径7mm、エックス線透過像2mm、深度9mmでも感染根管治療により徐々に病巣が浅くなり保存可能となった。しかし、超音波検査で14mm以上のものでは、エックス線写真で歯根の吸収が殆ど見られなくても抜歯となり、その抜歯歯を観察すると根分岐部に不良肉芽組織と伴に抜去された。感染根管治療にて保存された歯の超音波検査の平均値は、8.5±0.7mm、抜歯されたものの平均値は、11.8±2.8mmであった。 また、超音波検査を感染根管治療ごとに行うとエックス線の被爆を伴わず、臨床経過が追え、保存の可否も早期に診断できるのではないかと示唆された。 今後さらに症例を増やし、治療の診断基準の検討を行う予定である。
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