不協力児では、エックス線撮影が困難な場合もあり、また放射線被爆の問題もある。最近様々な分野で用いられてきている超音波診断法は、放射線被爆を伴わずに診断可能であるが、乳歯の歯内療法の分野ではまだ用いられていない。 今回、昭和大学歯科病院小児歯科外来患者のうち、乳前歯、乳臼歯部に根尖性歯周炎から歯肉膿瘍を有するもの24部位、その反対同名歯の分岐部を保護者の同意を得て、エックス線写真、および眼科用に開発されたNIDEK社製ECHOSCAN US-3300 10MHz OPHTHLMIC BIOMETORY Probeにて超音波検査法を用いて診断を行った。その結果、対象部位と対照部位とを比較すると、超音波検査測定値に有意な差が認められた。消炎治療後根管治療できたものを根管治療群とし、抜歯されたものを抜歯群とし比較検討したところ、歯肉膿瘍の大きさに有意な差がみられなかったが超音波検査測定値に有意な差が認められた。以上より歯肉になんらかの症状のある乳歯根尖製歯周炎の診断に有効であることが示唆された。超音波検査を治療の経過ごとに行ったところ、初回時と消炎後では有意な差が認められた。根管治療群では、消炎後の超音波検査結果が対照部位の測定値に近づくのに対し、抜歯群では消炎後も対照部位の測定値と有意な差が認められた。よって消炎後の超音波検査結果が対照部位の超音波検査結果と有意な差がある場合は抜歯される確率が高くなると推察された。保護者の了承を得てえられた抜去歯をCCDカメラで取り込み手動画像計測システムで近遠心の歯根の中点から口蓋根までの距離を計測したところ、消炎後の超音波測定値とほぼ近似しており、病巣が歯根分岐部全体におよんでいるのではないかと示唆された。 以上より超音波検査を感染根管治療ごとに行うと放射線被爆を伴わず、臨床経過が追え、保存の可否も早期に診断できるのではないかと示唆された。
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