研究概要 |
本研究は、乳幼児用食品(ベビ-フード)中のフッ化物濃度をHMDS-微量拡散法で分析し、乳幼児の一日フッ化物摂取量(Daily Fluoride Intake,DFI)を推定することを目的とした。乳児用食品は、(1)調整粉乳、(2)穀類、(3)肉・魚類、(4)野菜、(5)果汁(果物)に分類した。各食品群別の摂取時のF濃度は飲料水中のF濃度を0.1ppmとして算出した。調整粉乳中フッ化物濃度は、粉乳粉末で0.30-1.0ppm(平均0.59ppm,n=10)を示した。摂取時F濃度は、0.14-0.22ppm(平均0.17ppm)の範囲であった。穀類は、摂取時で0.06-0.88ppm(平均0.13ppm,n=11)を示し、特に、フッ化物濃度が高値を示した食品には、海産物の「しらす」やリン酸カルシウムが添加されていた。肉・野菜類は、0.02-0.23ppm(平均0.13ppm,n=20)、野菜は、0.04-0.60ppm(平均0.23ppm,n=12)、果汁(果物含む)は0.03-0.18ppm(平均0.10ppm,n=6)をそれぞれ示した。乳児用食品摂取にもとづくDFIの推定値は、3-4ヶ月で0.17mg/day、5-6ヶ月で0.19mg/day、7-8ヶ月0.26mg/dayを示した。これを体重1kgあたりで評価すると、3-8ヶ月で0.023-0.028mg/kgを示した。この推定値は、Ophaugら(1985)が主張するDFIの許容量(0.05-0.07mg/kg body weight)より低値であった。さらに、食品中フッ化物のBioavailabilityを評価するために、いくつかの高フッ化物食品の酸溶解性実験を試みた。この結果、ナンキョクオキアミ(身部)中フッ化物は、loosely bound fluorideであり、これにMgが関与していると考察された。煮干しやBone mealは、高濃度Caであり、フッ化物とのtightly boundが示された。また、茶中フッ化物は、loosely boundとtightly boundの両者が存在することが示唆された。今後は、分子レベルでのフッ化物の結合形態やその生理的意義の解析も検討課題にしている。
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