研究概要 |
平成8年度に引き続き新しい反応活性種,ニトロソケテンに関する研究を行なった.主な研究成果を以下に要約する. 1)近年,新しい実験装置や分光器の発展に伴い不安定な反応中間体が検出出きるようになった.ケテン誘導体は一般に不安定であり,単離できるものは限られている.最近,機器スペクトルにより数多くのケテン誘導体が検出されている.申請者らは米国研究者との共同により世界ではじめてニトロソケテンをFT-IRスペクトルを用いて検出することに成功した.[J.Phys.Chem.A,101,3936(1997)] 2)ニトロソケテンが各種ケトンと反応し環状ニトロンを生成することは前年度の研究で明らかにした.今回,ニトロソケテンと1-menthoneより得られるキラル環状ニトロンを用いて,生理活性の面で注目されている天然修飾アミノ酸,cyclopentenylglycineをはじめ各種修飾アミノ酸の完全不斉合成を達成した.[Tetrahedron,53,5725(1997)] 3)ニトロソケテンの新規利用法を目的にニトロソケテンの前駆体であるイソニトロソメルドラム酸と各種含窒素化合物との反応を行ない,複素環化合物の新合成法を見い出した.[Heterocycles,46,503(1997)] 4)イソニトロソメルドラム酸とdiazomethaneとの反応を検討し、新しいニトロソケテン誘導体,methoxycarbonylnitrosoketeneの存在を確認した.さらに本反応において複素環化合物の中間体となる新たなニトロン体を単離することが出来た.[Heterocycles,47,383(1998)]
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