研究概要 |
アミド結合はタンパク質等の生体高分子の重要な構成要素の一つであり,その立体構造は古くから有機化学の研究対象としてとりあげられており,また生理活性分子に於ても重要な役割を持つことが指摘されている.本研究ではベンズアニリドの窒素をメチル化したNメチルベンズアニリドが常にcis型で存在することに着目し,この分子を構成要素とした種々の分子構築を行った.Nメチルベンズアニリドをベンゼン環のパラ位で連結した化合物,およびNジメチルアミドによりベンゼン環を連結した化合物群においてこのcis配向性は維持され,目的とする一方向に伸びた鎖状の化合物を構築することができた.これらの化合物群の構造をX線結晶解析およびNMR解析により詳細に検討し,Nメチルアミド部分の立体構造は結晶中および溶液中で同様のcis型をとることを確認した. さらに,このNメチルベンズアニリドのcis配向性を利用して環状Nメチルベンズアミド類を合成し,その立体構造を検討した.meta-(methylamido) benzoic acidをtetrachlorosilaneと共に処理すると3-6個の芳香族アミド単位を有する環状オリゴマーが得られた.X線結晶解析の結果これらすべてのオリゴマーのアミド結合は結晶中でcis型であった.一方NMRによる解析の結果,トリマ-のスペクトルにおいてsyn型とanti型の平衡が存在することがわかった.現在さらに大環状のNメチルベンズアミドの精密構造解析を実施している.Nメチルベンズアミド類のcis配向性の理由については現在なお検討中であるが依然として不明である.今後はスルホンアミド類について検討する予定である.
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