光学活性なα-アミノホスホン酸は、ペプチドミメティックスにおける基本構成単位として、また、それ自体に生物活性を持つものが多く存在することから、新しい医薬品のリ-ド化合物として期待されている。この光学活性α-アミノホスホン酸を効率よく合成する方法として、我々は既にランタン-カリウム-ビナフトール錯体(LPB)を触媒として用いるイミンのヒドロホスホニル化反応の開発に成功している。得られるα-アミノホスホン酸エステルを加水分解することにより、対応するイミンより2工程でα-アミノホスホン酸の合成が可能である。本年度は、3-チアゾリン類のような環状イミンを基質とするヒドロホスホニル化反応についての検討を行った。触媒の中心金属としてランタン以外の希土類を用いて検討したところ、イッテルビウム-カリウム-ビナフトール錯体(YbPB)を触媒として世界で初めて本反応を触媒的不斉合成に展開することに成功した。本反応では5-10モル%の触媒を使用し、室温から50度という触媒的不斉合成としては比較的高温な条件下でも、最高95%eeに達する光学純度で目的物を得ることが出来る。α-アミノホスホン酸エステル成績体の絶対配置については、既知物質への誘導ならびにX線結晶構造解析により決定することが出来た。本反応の応用として、リウマチ治療薬であるL-ペニシラミンのホスホン酸アナログの合成にも成功した。
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