研究概要 |
研究課題、“遷移金属触媒によるアジリジン類の異性化反応の開拓と高活性イソスターの合成への展開",を遂行するため、この異性化反応が理論及び実用性の両面から系統的研究がなされてない未開拓領域であることをふまえ、以下の検討を加え,ほぼ所期の目的を達成した。 1. アルケン・イソスターを選択的に合成するのに必要なアジリジン環の3位にアルキル基を持つ2-ビニール・アジリジン系化合物は非経験的分子軌道法(ab initio)により2,3-シス体と2,3-トランス体のどちらが安定かを検討した。。また計算では1位に置換基を持たない2,3-ジアルキル・アジリジン類は2,3-トランス体のほうがエネルギー的に安定である。しかし、アルケン・イソスターを選択的に合成するのに必要な1位に置換基を有する2-ビニール・アジリジン系化合物では全く反対であり、2,3-シス体の方が安定ということを明らかにした。 2. アルケン・イソスターを選択的に合成するのに必要な3-アルキル-2-ビニール・アジリジン系化合物の2,3-シス体の方が2,3-トランス体よりエネルギー的に約1kcal/mol 2,3-シス体の方が安定であることを明らかにした。 3. 窒素をalkylsulfonylまたはarylsulfonyl基で保護したキラルな3-アルキル-2-ビニール・アジリジン系化合物を主として光学活性アミノ酸またはキラルな2,3-エポキシ・アルコールから合成した。 4. 今日の化学的手段では3-アルキル-2-ビニール・アジリジン系化合物の2,3-シス体または2,3-トランス体のうち2,3-シス体のみを一方的に得る事は困難であるので、副生した2,3-トランス体を2,3-シス体に変換することを検討した結果、パラジウム系の触媒存在下において、2,3-シス体および2,3-トランス体の混合物から2,3-シス体を選択的に合成することができることを明らかにした。 5. ホモキラルな2,3-アルキル-2-ビニール・アジリジン系化合物より医薬品として重要なアルケン・イソスターの効率的合成ルートを開拓した。 6. 合成したアルケン・イソスターをペプチドに組み込み、活性の高いプソイドペプチドを合成することができた。
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