研究概要 |
蛋白質のチロシン、セリン、スレオニン残基のリン酸化、脱リン酸化が生体内情報伝達系において重要な役割を果たしていることが明らかになるにつれ、近年リン酸化ペプチド・タンパク質の需要が高まっている。このような観点より『二段階脱保護法による実用的リン酸化ペプチド・タンパク質の合成法の開発に関する研究』を遂行し以下のような実績をあげることができた。 1.合成ストラテジィーとしてジメチルホスフェート含有アミノ酸[Boc-Ser/Thr/Tyr-(OPO_3Me_2)-OH]を縮合し、最終段階においてリン酸の保護基を含む全保護基の除去を行う方法を採用した。これらアミノ酸誘導体はBoc型固相ペプチド合成法に適用可能であり。さらに前年度までの研究より本メチル基の脱保護にはHigh Acidic[1 M TMSOTf-thioanisole/TFA,m-cresol,EDT(ethanedithiol)]-Low Acidic[1 M TMSOTf-thioanisole/TFA,m-cresol,EDT+TMSOTf+DMS(dimethyl sulfide)]からなる二段階脱保護法が非常に有効であることを見出しが、本法は脱保護時間に長時間を要するという欠点を持っていた。そこで本脱保護系の二段階目にさらに改良を加えたところ、TMSOTf-DMS-m-cresol(4:6:1)からなる系が優れた脱保護能力を有し、その反応時間を約3分の一に短縮することが可能となった。 2.長鎖リン酸化ペプチドの合成に必要とされるリン酸化フラグメントの合成については、ジメチル保護リン酸化アミノ酸とLys(ClZ)を含有する保護ペプチドフラグメントをトリフルオロメタンスルホン酸(TFMSA)-TFA-m-cresol(1:9:1)からなる系で脱保護するとLysとリン酸化アミノ酸側鎖が完全に保護されたチオエステルペプチドフラグメントが効率的に合成できることを見出した。現在、得られたフラグメントを用いる長鎖リン酸化ペプチドの合成について検討中である。
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