好中球と血管内皮細胞との細胞間接着を阻害する物質を効率的に探索しうるin vitroスクリーニング系を開発し、細胞間接着抑制を作用機序とする新しいタイプの抗炎症薬の候補物質を探索した結果、インドネシア薬用植物からカッシノイド成分bruceine Bを見出した。さらに検討しこれまでに以下の成果を得ている。 1. bruceine Bの構造と細胞間接着抑制活性との相関を検討する目的で、インドネシア産ニガキ科植物Quassia indicaの木部に含まれるカッシノイド成分を検索し、5種の既知カッシノイド類を単離同定した他、5種の新規カッシノイド類samaderine X、Y、Z、indaquassin Xおよび2-O-glucosylsamaderine Cを単離し、それらの全化学構造を明らかにした。 2. 中国で「鴉胆子」とよばれ容易に入手できるBrucea javanicaの果実を用いて、brucein Bを効率的に得る方法を検討した。その結果、果実抽出エキスのカッシノイド画分のアルカリ処理で得られるdesacetylyadanzioside Fから酵素反応と化学反応でbruceolideを経由する効率的な方法を見出し、bruceine Bを乾燥果実から0.12%の高収率で得ることができた。 2. In vitroで顕著な細胞間接着抑制作用を示すことが明らかになったカッシノイド成分bruceine Bとsamaderine Bおよびsamaderine Xについて、ラットのカラゲニン胸膜炎モデルを用いてin vivoでの抗炎症作用の有無を検討した結果、in vivoでも抗炎症作用を示すことが明らかになった。 3. 関連カッシノイド類とbruceolideを用いてアシル化反応により合成した種々のbruceine Bアナログを用いて構造と活性の相関を検討した結果、活性発現にはA環のエノン、11及び12のフリー水酸基、3もしくは15位のアシル基が必要であることが明らかになった。
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