研究概要 |
現時点における本研究の実績として、つぎの4項目を示す。 1.アルドール反応とグローブ開裂が連続的に生起することにより炭素-炭素結合の形成と切断が異なる位置で起こる興味深い新規素反応研究の一環として、今回新たに複素環式ケトンの分子間アルドール反応を基盤とする環変換反応を開発した。本反応は常法によれば4行程を要する化学変換を1行程で達成できる効率性と将来的な不斉反応への高い可能性という2点において特徴を持つとともに、α,α'-ジ置換含窒素複素環の立体選択的構築法としても優れている。Heterocycles,43,625-631(1996). 2.先に新規不斉素子としてその構築法を開発した光学活性cyclohexa-3,5-diene-1,2-diolの結晶状態と溶液状態における立体配座に関して重要な知見(両状態におけるヘリシティーの確認とその絶対構造が判明)を得、“不斉要素としてのヘリシティーを活用する不斉反応の研究"における基礎を確立することができた。Tetrahedron:Asymmetry,7,301-306(1996). 3.酵素的手法による5員環を母核とする新規不斉源の構築に成功すると共に、新たな抗エイズ薬として有望視されている炭素環ヌクレオシドの効率的な合成法を確立した。本法は関連化合物の一般的合成法としての適用も期待されるものであり、さらに研究を継続中である。J.Org.Chem.61,6952-6957(1996). 4.酵素的手法による7員環を母核とする新規不斉源の構築に成功すると共に、抗高脂血症薬プラバスタチン関連化合物の活性発現部位である6員環ラクトン部の効率的不斉合成法開発に成功した。本研究はさらに標的化合物の全合成研究へ向けてさらに展開中である。Tetrahedron:Asymmetry8,195-201(1997) これらの研究成果は現在進めている新規不斉源の創製とその多面的活用研究の基礎(項目1、2)と応用(項目3、4)の一端を示すものであり、今後の進展が期待できる。
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