研究概要 |
光学活性スルホキシドを不斉補助基に用いる高い不斉誘起は,1, 3-アリル転移などごく一部の反応を除けば,反応点と不斉補助基が直結していることが必須条件とこれまで考えられてきた.しかし,遠隔位に不斉補助基があっても,二つの反応ジアステレオ面の一方の面の立体的遮蔽を,金属(=ルイス酸や反応剤)などのキレーションにより空間的に制御する基質のデザインと反応プロモーター(ルイス酸)を的確に選択すれば,高い不斉誘導が達成可能となる.本研究目的を達成できる基質として,フラン環やチオフェン環をもつ光学活性スルホキシドを設計し,有機金属試薬やルイス酸金属による強固なキレーションがもたらす反応ジアステレオ面の立体制御を計画し,以下反応において興味ある知見を得た. 1.α′-(p-トリルスルフィニル)フリル/チエニル α,β-不飽和エノンを合成し,その不飽和二重結合をジエノフィル(スルフィニル基と反応端が1, 4-位)に用いたシクロペンタジエンとのルイス酸触媒によるディールス・アルダー反応において高い不斉誘起を観測した.ルイス酸としては,イオン半径が大きくしかも高い配位能を持つランタノイドトリフラート(20モル%)が有効であることが分かった. 2.フラン環に直結するスルフィニル基をもつアルデヒド{=β-(p-トリルスルフィニル)フルフラール}のアルデヒド部(スルフィニル基と反応点が1, 3-位)をジエノフィルに用いたヘテロディールス・アルダー反応において高い不斉誘起の実現に成功した. 3.チオフェン環に直結するスルフィニルケトン類{=β-(p-トリルスルフィニル)チエニルケトン)を合成し,水素化金属還元剤による還元については,高ジアステレオ選択的に反応が進行し,対応するアルコールが得られた.得られたアルコールの脱スルフィニル化により,光学活性チエニルアルコールの半期合成法の開発に成功した.
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