ラットまたはマウスを強制水泳させると脱出指向性行動に続き無動状態を生じる。本研究ではこの試験法により抗うつ活性が認められた生薬・甘松香のメタノールエキスの活性成分を検討した。エキスを水とエーテルで分画して得たエーテル可溶画分は乾燥生薬10g/kg相当量の投与(i. p. )で抗うつ薬imipramineよりは弱いものの、明瞭な無動状態時間の短縮が示した。そこで、エーテル可溶画分をシリカゲルクロマトグラフィーによりFr. 1-Fr.6に分画した。各画分をそれぞれ乾燥生薬10g/kgで腹腔内投与したところ、ヘキサン-酢酸エチル(9 : 1)溶出画分Fr.1および(5 : 5)溶出画分Fr.5に活性が認められた。その後の成分検索でFr.1からはセスキテルペノイドであるnardosinoneおよび1 (10) -aristolen-9β-olが単離された。これらのうち生物試験に十分な量が得られたnardosinoneを投与量100mg/kgおよび300mg/kgにより強制水泳運動試験を行った。しかしながら、いずれでも無動状態時間の短縮は認められなかった。この画分はシリカゲルTLC上でかなりの数のスポットを与える。そこで、今後は生物試験にとって十分な量が得られなかった1 (10)-aristolen-9β-olを始め、さまざまな含有成分を単離することにより活性試験を行い、対うつ活性の本体を明らかにする予定である。また、Fr.5中の活性成分についても検索する。
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