研究概要 |
1.前年に引き続き,光学活性N_α-tert-butoxycarbonyl-4-bromotryptophan methyl ester(1)と1,1-demethylallylalcoholのHeck反応によって得られるN_α-tert-Butoxycarbonyl-4-(2-hydroxy-2-methyl-1-butene-1-yl)-1-tosyltryptophan(2)の脱炭酸を伴うラジカル閉環反応による,cyclohexa[c,d]indole誘導体への閉環反応を試みたが,成功しなかった.即ち,カルボキシル部分をthiol ester,selenol ester,oxime ester等に変換した後,光反応あるいは熱によるラジカル反応を試みても,目的とする閉環反応は起こらなかった. 2.前年度には,1を原料としたエルゴリン骨格を有するchanoclavine-l(3)の合成に成功したが,本年度は,1を原料とし,麦角アルカロイドすべての共通の生合成上の中間体と考えられる,γ,γ-dimethylallytryptophan(3,DMAT)の合成に成功した.即ち,2を脱水してジエンとした後,Mg/MeOHで還元すると,1,4-還元が進行したN-Boc-DMAT methyl esterが収率よく得られた.KOH/MeOHでエステルを加水分解した後,50%酢酸でBoc基を除いたところ,ラセミ化することなく,また収率よく目的のDMAT(3)が得られた.
|