研究概要 |
様々なヘム蛋白の活性中心に関わる金属ポルフィリン錯体の機能探索の一環として、そのルイス酸触媒能に着目し、新規な触媒反応の開発を目指している。本年度は、エポキシドのカルボニル化合物等への変換反応を指標として、金属ポルフィリン錯体による触媒反応を検討した。酸によるエポキシドのカルボニル化合物への特異化反応は、有用な官能基への変換反応の一つとして従来から大変良く知られた反応である。この反応においてはこれまでに数多くのルイス酸反応剤が報告されているが、基質に対して等量以上の反応剤を必要としたり、反応の位置選択性が低く複数の生成物を生じる等の問題点を抱えている場合が多い。即ち、触媒量で単一の生成物を位置選択的に与え、種々のエポキシドに幅広く適用可能なルイス酸反応剤についてはあまり知られていない。今回、2,3-二置換エポキシドをモデルエポキシドとして種々の金属テトラフェニルポルフィリン(MtTPPX)との反応を検討した結果、触媒量のFeTPPC1O4によりエポキシドがオキシラン環開裂に続くヒドリド転位を経て、単一のカルボニル化合物(ケトン体)に位置選択的に異性化されることを見出した。本触媒はエポキシドの置換基の種類および置換様式(2,2,3-三置換エポキシドおよび環状エポキシド等)によらず、高位置選択的なケトン体への異性化反応に適用でき、従来から汎用されてきたルイス酸触媒とは異なる触媒能を有することを明らかにすることができた。平成9年度は、これまで触媒量のルイス酸による位置選択的な異性化反応が困難とされてきた一置換エポキシド(末端オレフィンエポキシド)について本触媒の有効性を検討することと共に、本異性化反応の選択性におよぼすMtTPPXの金属および軸配位子の効果を明らかにすることにより、さらに有効な触媒反応の開発を目指す。
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