伝承薬物における加工調製の科学的解析を基盤とした薬理活性物質の探索

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 08672461
• 研究機関: 京都薬科大学
• 研究代表者: 吉川 雅之 京都薬科大学, 薬学部, 教授 (90116129)
• 研究分担者: 島田 ひろみ 京都薬科大学, 薬学部, 助手 (90268102) ; 村上 敏之 京都薬科大学, 薬学部, 助手 (40278445) ; 松田 久司 京都薬科大学, 薬学部, 助教授 (40288593)
• キーワード: 生薬修治 / 加工調製 / 薬理活性成分 / 伝承薬物 / 甘茶 / 生姜 / 木香 / 芍薬

研究概要

生姜及び木香修治における重要化合物 6-shogaol、6-gingenol、dehydrocostus lactone、costunolideについて、胃潰瘍原因菌ヘリコバクターピロリ菌やMRSA菌25種への抗菌作用を検討した結果、これらの化合物には抗生物質よりは弱いものの、オメプラゾールなどの合成健胃薬よりも強いなど天然化合物として非常に有効であることが判明した。
甘茶修治の化学過程を解明するため、未修治のアマチャ葉について生薬甘茶成分との比較のもとに成分探索した。その結果、新規ジヒドロイソクマリン配糖体 9種とセコイリドイド複合体2種を得、それらの絶対構造を含む全化学構造を明らかにするとともに、甘茶修治において加水分解などの化学過程の存在が判明した。
酸棗仁の加工調製の科学的解析を目的に、生酸棗仁について成分探索し、新規サポニン6種を単離構造決定するとともに、ラット肥満細胞からの抗原抗体反応誘発のヒスタミン遊離抑制作用のあることを明らかにした。
シャクヤク新鮮根について、生薬芍薬(赤芍及び白芍)成分との比較のもとに成分探索し、新規モノテルペン配糖体成分2種及びモノテルペン2種を単離し、それらの絶対配置を含む全化学構造を明らかにするとともに、ヒスタミン遊離抑制作用や摘出回腸の電気刺激収縮の抑制作用のあることを見出した。
未修治生姜である生三七人参の含有成分について、修治した熟三七人参と比較のもとに検討し、10種の新規サポニン及び珍しいアセチレン型脂肪酸配糖体を単離構造決定するとともに、肝保護作用を明らかにするなど平成9年度の当初計画を完全に達成した。

研究成果

• [文献書誌] Masayuki Yoshikawa: "Bioactive Saponins and Glycosides.X.On the Constituents of Zizyphi Spinosi Semen,the Seeds of Zizyphus jujuba MILL.var.spinosa HU(1):Structures and Histamine Release-Inhibitory Effect of Jujubosides Al and C and Acetyljujuboside B." Chemical & Pharmaceutical Bulletin. 45・7. 1186-1192 (1997)
• [文献書誌] Masayuki Yoshikawa: "Bioactive Saponins and Glycosides.IX.Notoginseng(2):Structures of Five New Dammarane-Type Triterpene Oligoglycosides,Notoginsenosides-E,-G,-H,-I,and -J,and a Novel Acetylenic Fatty Acid Glycoside,Notoginsenic Acid β-Sophoroside,from the Dried Root of Panax notoginseng(BURK.)F.H.CHEN." Chemical & Pharmaceutical Bulletin. 45・6. 1056-1062 (1997)
• [文献書誌] Masayuki Yoshikawa: "Bioactive Saponins and Glycosides.VIII.Notoginseng(1):New Dammarane-Type Triterpene Oligoglycosides,Notoginsenosides -A,-B,-C,and -D,from the Dried Root of Panax notoginseng(BURK.)F.H.CHEN." Chemical & Pharmaceutical Bulletin. 45・6. 1039-1045 (1997)
• [文献書誌] 吉川,雅之: "漢方薬理学ー漢方薬の修治と成分ー" (株)南山堂, 99-110 (1997)