研究概要 |
シメチジンを初めとするヒスタミンH_2拮抗薬は、消化性潰瘍治療薬として広く用いられているが、それらの活性発現には、分子内水素結合によるfold形が有利であると考えられている。一方、我々は最近β-イミダゾールC-ヌクレオシドの立体選択的合成をイミダゾールの特性と光延反応を組み合わせることによって高収率で達成することに成功した(T.Kurihara et al,J.Org.Chem,1996,61,4405)。これらの結果から、抗潰瘍活性を持つイミダゾールC-ヌクレオシドを設計したところ4(5)-(5-Amino-2,5-dideoxy-β-D-ribofuranosyl)imidazole(1)と4(5)-[5-Deoxy-5-(N-phenyl-thioureido)-β-D-ribofuranosyl]-imidazole(2)にシメチジンのほぼ1/2の抗潰瘍性活性が見られた。我々は、さらに1のイミダゾールの4(5)位にメチル基を導入することでシメチジンで見られるイミダゾール水素の互変異性の制御と、グリコシド結合の回転傷害による分子内水素結合の形成を期待して4(5)-Methyl-4(5)-(5-amino-5-deoxy-β-D-ribofuranosyl)imidazole(3)とそのシアノグアニジン誘導体1-Cyano-2-methyl-3-{5-deoxy-1-[4(5)-methyl-1H-imidazol-4(5)-yl]-β-D-ribo-furanos-5-yl}guanidine(4)の合成を行った。合成法は、あらかじめメチル基をもつイミダゾ-リルのリチウム塩と2,3,5-tri-o-benzyl-D-ribose(5)との付加反応つづく光延反応により立体選択的にβ-ヌクレオシド中間体を合成し、脱保護反応、5′位の水酸基の位置選択的アミノ化により目的の3を5から43%という高収率で合成することに成功した。さらに3のシアノグアニジン(4)への変換は二工程79%で行われた。このように合成した3と4のラット水浸拘束ストレス潰瘍によるin vivo抗潰瘍活性試験を行ったが、残念ながら先に見いだされた1,2に優る結果は得られなかった。
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