本研究の目的は、尿毒症患者における結合組織の脆弱化の発症機序を明らかにすることである。尿毒症患者では体内への尿素の異常蓄積に伴いシアン酸の生成量が著しく上昇する。我々はシアン酸が生理的条件下でデヒドロアスコルビン酸(DHA)と速やかに反応しカルバミルデヒドロアスコルビン酸誘導体(CDA)を生成することを明らかにした。CDAの構造解析により、この化合物は新規化合物であることが明らかとなった。CDAの分析法を確立し生体試料に応用したところ、正常人の血漿中にはCDAは検出されないものの尿中に検出された。ラットを用いたCDAの生体内挙動解析の結果より、静脈内投与されたCDAは完全に尿中排泄され、その主代謝経路は尿中排泄であることが明らかとなった。これらの結果より、生体内において尿素より生成するシアン酸はDHAと反応しCDAを生成していることが明らかとなった。さらに、アスコルビン酸(AsA)およびDHAの同時定量法を確立しAsA-DHA酸化還元系に対するシアン酸の影響について検討したところ、酸化的ストレス下で細胞内アスコルビン酸の枯渇が誘導されることが示唆された。AsAは間葉系細胞のコラーゲン産生の必須成分であることから、尿毒症患者における結合組織の脆弱化は、本原理に基づくコラーゲン産生量の減少が一要因であると推察された。現在、コラーゲン、ヒアルロン酸およびプロテオグリカンの組織化学的染色法を用いて、組織化学的観察を実施中である。
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