本研究の目的は、尿毒症患者における結合組織の脆弱化の発病機序を明らかにすることである。尿毒素であるシアン酸はデヒドロアスコルビン酸(DHA)と不可逆的に反応し、カルバミルデヒドロアスコルビン酸誘導体(CDA)を生成する。これまで、哺乳動物血漿中にはDHAが総ビタミンC量の約20-40%存在すると報告されている。よって、生体内にシアン酸が異常に増加した場合、CDAの生成が起こるはずである。しかし、実際には健常者血漿には、報告値とは異なり、極微量のDHAが存在するにすぎないことが明らかとなった。すなわち、健常者では、シアン酸の過剰投与によりアスコルビン酸の枯渇は誘導され難い。実際、モルモットにシアン酸を長期に亘り投与し続けたにも係わらずアスコルビン酸の枯渇は起きなかった。一般に、尿毒症患者は尿毒素の蓄積、透析治療等により常に酸化的ストレスに曝されていると考えられている。このことより、尿毒症患者の細胞外液には相当量のDHAが存在しているものと推察された。以上の結果より、間葉系細胞のコラーゲン産生に必須成分であるアスコルビン酸の枯渇にはシアン酸の異常生成だけではなく、酸化的ストレスの過剰負荷もまた重要な要因であることが明らかとなった。すなわち、尿毒症患者における結合組織の脆弱化を抑制するには、酸化的ストレスに対する防御が重要であることが明らかとなった。
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