尿毒症患者では、週3回におよぶ透析治療により血液中の低分子可溶性物質の多くが失われる。また、腎におけるエリスロポイエチン産生能低下により貧血状態が誘導される。よって、赤血球による酸化性物質の解毒能もまた有意に低下している。このような状況下では、軽度な炎症反応によっても酸化的ストレスが負荷される。透析患者の血漿中アスコルビン酸およびデヒドロアスコルビン酸を測定した結果、アスコルビン酸に対するデヒドロアスコルビン酸含量の比が有意に上昇していた。ヒト線維芽細胞をアスコルビン酸存在下で培養し、コラーゲン産生を指標として細胞内アスコルビン酸含量について検討した。5%二酸化炭素-95%空気下、37℃で線維芽細胞を培養した結果、アスコルビン酸はデヒドロアスコルビン酸へと酸化される。線維芽細胞はグルコーストランスポーターによりデヒドロアスコルビン酸を取り込み、これをアスコルビン酸へと再還元する。しかし、シアン酸が培地中に存在することにより、デヒドロアスコルビン酸がシアン酸と不可逆的に反応してしまい、細胞内へのデヒドロアスコルビン酸の取り込み量が低下し、細胞内アスコルビン酸含量が有意に低下することが明らかとなった。その結果、線維芽細胞による細胞外マトリックス成分の合成分泌が抑制されることが明らかとなった。
|