覚醒時動物においてプロドラッグ(ドラッグ)から消化管内、消化管壁および肝臓でどのような割合と速度でドラッグ(代謝物)が生成するかを知ることは臨床的薬物を開発するに際して重要な知見を与える。今回はモデル薬物システムとして抗がん剤である5-fluorouracll(5-FU)とそのプロドラッグである5-fluoro-5′-deoxyuridine(5′-DFUR)を採用した。軽いエーテル麻酔下でラットの開腹手術を行い、カニューレションを大腿動脈および門脈上部に施した。ボールマンケージにラットを固定状態で覚醒させ、5′-DFURを経口投与後カニューレからそれぞれの部位から採血した。プロドラッグおよび生成したドラッグが消化管から門脈に移行する場合は門脈血濃度が体循環血濃度よりも高くなった(P-S difference)。この現象を利用して門脈移行した5-FUおよび5′-DFURおよび肝臓通過率を求めた。結果として10%に近い5-FUが消化管で5′-DFURから生じていること、5′-DFURは肝臓でほとんど代謝されないこと、5-FUは容易に肝臓で消失すること、両化合物の門脈への吸収時間が1.5時間で、肝臓通過時間が無視できることがわかった。
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