研究概要 |
本研究においてはスカベンジャー受容体の関与が強く示唆されているラット肝非実質細胞(Kupffer細胞)、初代培養肝実質細胞及び遊離腹腔マクロファージへの分画^3H-heparinの取り込みを、表面結合と内在化に分離評価して、その後内在化した分画^3H-heparinの放出特性を詳細に検討することを目的とし、以下の結果を得た。 1)高分子量分画ヘパリン(20,000Da)の取り込みにはそれら三種の細胞種共に濃度依存性が認められ。ラット遊離Kupffer細胞と遊離腹腔マクロファージにおいて、近似した挙動が認められた。すなわち、それらの解離定数(K_d)はそれぞれ5.7および6.7nM程度であり、最大結合キャパシティー(B_<max>)はそれぞれ1.5および1.9pmol/10^6cellsという値を示した。それに対して、初代培養肝実質細胞における解離定数(K_d)は53.5nM、最大結合キャパシティー(B_<max>)は32.8pmol/10^6cellsという値を示しており、前二者の細胞種と比較して有意に高い値であり、それぞれ約10倍及び20倍となっていた。これらは、初代培養肝実質細胞の方が他の二種の細胞種に比べて、分画^3H-heparinに対して結合の親和性がより低く結合キャパシティーがより大であることを意味している。 2)ラット肝非実質細胞(Kupffer細胞)及び初代培養肝実質細胞における分画^3H-heparinの表面結合の解離定数(K_d)は、heparinの分子量の低下と共に上昇した。即ち、それぞれにおいて分子量が低下すると細胞表面への結合性が低下することが明らかになった。しかし、最大結合キャパシティーには両細胞種とも分子量の低下による有意な変化は認められなかった。分画^3H-heparinのそれらの細胞種における内在化は、表面結合量の関数となっていることが明らかになった。 3)ラット初代培養肝実質細胞からの分画^3H-heparinの見かけの放出速度定数(k_<rel,app>)は、見かけの内在化速度定数(k_<int,app>)約1/3程度であり、その見かけの放出速度定数は培地の温度を37℃から4℃に低下させると0.069から0.016(hr^<-1>)へと、約1/4に減少した。培地中にα-globulinは放出の速度定数には影響を与えなかった。内在化量の増加は見かけの放出速度定数を有意に増大させた。
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