本研究ではラット好塩基球肥満細胞(RBL-2H3細胞)のγ鎖ITAM領域の19アミノ酸残基中、2個のリン酸化チロシンを含むペプチドI (Asp-Ala-Val-Tyr (P)-Thr-Gly-Leu-Asn-Thr-Arg-Asn-Gln-Glu-Thr-Tyr (P)-Glu-Thr-Leu-Cys)に対するモノクロナール抗体を作製し、これを用いてRBL-2H3細胞の活性化初期過程におけるFcεRIのチロシンリン酸化反応の可視化解析を行うことを試みている。 Fmoc-TyrとEt_2NP (OCH_3)_2より合成したFmoc-Tyr (OCH_3)_2OHを用い固相Fmoc法によりペプチドIを合成した。ペプチドIのリン酸残基の(OCH3)の脱保護に苦心したが1M TMSBr/TFA/m-cresol/thioanisole/EDTを用いて脱保護に成功した。さらに、ペプチドII (Leu-Thr-Glu-Tyr (P)-Thr-Glu-Cys)、ペプチドIII (Leu-Gly-Thr-Tyr (P)-Val-Ala-Asp-Cys)を合成した。コントロールとしてリン酸化されていないチロシンを含むペプチドI、IIおよびIIIと同じアミノ酸配列のペプチドも合成した。 リン酸化チロシンペプチドIをC末端に付けたシステイン残基を利用して、MBS法によりタンパク質KLHに結合し、マウスに免疫して、リン酸化ITAMに対する抗体を作製した。ペプチドI、IIおよびIIIをMBS法によりBSAに結合して、これらを抗原として用い、ELISA法を行い、2個のリン酸化チロシンを認識している抗体をクローニング中である。さらに、1個のリン酸化チロシンを含有するペプチドIIおよびIIIのモノクローナル抗体も作製中である。 これらのモノクローナル抗体をFluorescein標識し、刺激を加えたRBL-2H3細胞を固定し、細胞内に導入して共焦点レーザ顕微鏡でγ鎖のITAM領域のリン酸化反応を可視化し、観察する。
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