ラット肥満細胞RBL-2H3のIgE受容体Fc ε RIのβおよびγ鎖にはITAM(Immunoreceptor Tyrosine-based Activiation Motif)と呼ばれる共通のモチーフが見いだされ、その中にリン酸化される2個のチロシン残基が存在する。これなのチロシンのリン酸化は細胞内シグナル伝達機構に重要な役割を果たしていることが指摘されている。 そこで本研究ではIgEレセプターのβ-およびγ-鎖に存在するITAMのリン酸化ペプチドβ(DRLYEELNHVYSPIYSELC)およびγ(DAVYTGLNTRNQETYETLC)の合成を試みた。リン酸化チロシン含有ペプチドはFmoc-Tyr-(PO_3Me_2)OHを用い、脱保護基にはTMSBR(trimethylsilanebromide)を使用することにより、以下六種類のリン酸化ペプチドの合成に成功した。すなわち、(1)DRLYEELNHVYSPIYSELC (2)DRLYEELNHVC (3)YSPIYSELC (4)DAVYTGLNTRNQETYETLC (5)DAVYTGLNTC (6)NQETYETLCである。 【ITAMの細胞内動態の画像解析】 得られたモノクローナル抗体で細胞を蛍光染色したところ、J-4抗体は結合能が低く、J-59およびJ-69抗体は細胞質と細胞膜を分布しており抗原刺激によりJ-69抗体はとくに細胞膜付近の膜タンパク質と強く結合していた。そこで、J-69抗体を用いて、抗原刺激による肥満細胞RBL-2H3の時間変化を画像解析したとこる、刺激の2分後および15分後には、刺激前よりも細胞膜付近のタンパク質への結合能が著しく増大していた。1時間および2時間後には、2分および15分後よりも蛍光強度は減少しており、膜タンパク質から抗体が遊離することが示唆された。これは刺激後時間が経過するに伴いフォスホターゼにより脱リン酸化が進行し、γ鎖が脱リン酸化されるに伴いJ-69抗体が遊離するためと考察している。
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