研究概要 |
1 5配位ニトロシルヘムのモデル錯体Fe(p)NO の溶液試料の空気に対する安定性はp(ポルフィリン)の種類に依存することが明らかにされた。たとえば,p=TMP(テトラメシチルポルフィリン)はp=TPP(テトラフェニルポルフィリン)or OEP(オクタエチルポルフィリン)よりも安定であった。 2 そこで,スペクトルのシミュレーションを単純化するために,同位体濃縮されたFe(TMP)^<15>NO(99 Atom % ^<15>N)を調整し,そのトルエン溶液(1〜3mM)の ESR スペクトルを温度範囲 10〜380 K で測定した。スペクトルは低温域における斜方対称型(10〜120K,g_1≠g_2≠g_3)から軸対称型(120〜200 K,g_1=g_2≠g_3)を経て高温域における等方型(200〜380 K,g_1=g_2=g_3)へと大きく変化した。 3 Fe(p)NO 分子全体の回転運動(R_1)と NO軸配位子の分子内回転運動(R_2)の両者を考慮したスペクトルのシミュレーション(Stochastic Liouville Method)により,全温度域におけるスペクトル変化の定性的な理解が得られた。 4 R_2(NO軸配位子の分子軸のまわりの90°ジャンプ)のみを考慮したModified Bloch Equationsによるシミュレーションは斜方対称型から軸対称型へのスペクトル変化を説明し,Stochastic Liouville Method による結果とよく調和した。 5 現在,全温度域における定量的な解析法を検討中である。
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