Entercocciの細胞内pHはF-typeのH^+-ATPaseによるH^+の排出により調節されている。即ち、細胞内pHが低下すると細胞膜のH^+-ATPaseの量が増加し、H^+が細胞外に排出されることにより、細胞内pHはいっていに保たれる。従って、細胞内pH調節にとっても最も大切なことはH^+-ATPase量の調節であり、この調節は細胞内pHによるH^+-ATPaseの分子集合の制御で行われていることが分かっていた。そこで、本研究ではこの調節機構を明らかにするために、以下の研究を行った。 F-typeのATPaseは、細胞膜に存在するFo部分とFo部分に結合している膜表在性のF_1部分より構成されている。したがって、H^+-ATPaseの分子集合の調節機構として次の二つの機構が考えられる。(A)まずF_1とF_0のサブユニットが別々に集合して、F_1とF_0のcomplexができた後、両complesが結合してF_1F_0-complexができる。そして、F_1-complexとF_0-xomplexの結合がpHにより制御されている。(B)まず細胞膜にF_0-complexができ、このF_0-complexにF_1subunitsが集合してF_1F_0-complexができる。そして、いずれかのcomplexが集合する段階でpHによる調節が行われる。しかし、実験結果は、(A)の可能性はないことを示した。 β subunitの385番目のグリシンがトリプトファンに変化した変異株であるAS17株を調べたところ、この変異株は、pHが低下しても分子集合の促進が少なく、結果として酵素量の増加がない変異株であることがわかった。特にF_1部分の集合がpHにより促進されないこと、細胞質に蓄積するF_1subunitの量は野生株に比べ多いことがわかった。従って、上記の(B)の可能性が高く、pHによる分子集合の制御は、β subunitが分子集合する段階である可能性が最も高いと考えられる。
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