MAHレクチンの285個のアミノ酸のうち、糖結合部位である127番目から137番目の部分をターゲットに合成oligonucleotideをpri-merとして用いPCRのoverlap extensionによりランダマイズした。このようにして作成したレクチンライブラリーをpGEXvectorに組み込んで大腸菌にGSTfusion proteinとして発現させ、ランダムに100個のクローンをとり、そのうち、リコンビナントタンパクを発現していると思われる16個のクローンを得た。affinity chromatographyによって精製した抗MAHポリクローナル抗体でWestern blottingを行ったところ、すべてのクローンが反応性を示した。これらのクローンのDNA配列を決定したところ、糖結合部位アミノ酸配列はすべて異なることが分かった。 ヒトの赤血球表面にはシアル酸を多量に含む糖タンパク質であるグリコフォリンが存在し、MAHはその糖鎖に結合し赤血球を凝集させることが知られている。そこで、得られた16個のクローン由来のタンパクの赤血球凝集活性を比較した。その結果、2個のクローン由来のタンパクには凝集活性がなく、残りの14個のクローン由来のタンパクは凝集力価がそれぞれ異なることが分かった。また、これらの赤血球をシアリダーゼ処理した場合、MAHはその反応性が大きく低下するのに対し、14個のクローン由来のタンパクではあまり変化が無かった。さらに、ヒトの赤血球とは構造の異なる糖鎖を表面に呈示しているウシ、ウマ、ブタ、ニワトリの赤血球に対しても、異なる反応性が見られた。糖結合部位を改変したMAHレクチンは糖結合特異性がそれぞれ異なることが示された。
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